活動性低下によるフレイルの病態解明とバイオマーカーの探索
フレイルは、加齢に伴い、健康を支える心身機能が脆弱になっている状態です。これは加齢とともに進行しますが、早期に発見し適切な対応をすることでその進行を最小限にとどめることが可能と考えられています。フレイルは、1) 身体的活動性の低下、2) 歩行速度の低下、3) 筋力の低下、4) 全身倦怠感(疲労感)、5) 意図しない体重減少の5つの項目のうち、3つ以上に該当する場合に診断されますが、その補助診断となる客観的指標(バイオマーカー)は明らかにされていません。
本研究では、① 身体的活動の視点を含めたフレイルの病態解明とバイオマーカーを探索することを目的としており、② 候補バイオマーカーが、高齢者の健康障害の発生や増悪の予測因子となりうるか否かを検証します。このために下記4つの研究計画を推進します。
- 国立長寿医療研究センターでは、フレイル高齢者を対象としたレジストリ研究とバイオバンク事業を連動して実施しており、本研究を推進する基盤が整っています。この資源を活用して、フレイルに関連する老化に関連する血液指標や血液中の代謝産物、また遺伝子の発現に関する探索研究を行います。
- 国立循環器病研究センターでは、動物モデルを用いて、フレイルのバイオマーカー候補を分析するとともに、その生物学的意義を確かめます。
- 国立国際医療研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立がん研究センター、国立長寿医療研究センターでは、フレイルバイオマーカーの候補分子を確かめるための検証コホート調査を立ち上げ、候補バイオマーカーと健康障害の発生や増悪の関連性を解析します。
- 国立成育医療研究センターでは、解析のためのバイオインフォマティシャンを育成するプログラムやコンテンツを作成します。
研究のイメージ図
期待される効果
身体的活動の視点を含めたフレイルのバイオマーカーが発見されれば、客観的指標として診断に役立ち、健康診査に組み込むことで、高齢者の健康寿命の延伸の助けとなりえます。また、フレイル予防や介入手段の効果判定として有用性も期待できます。
主任研究者
佐竹昭介(国立長寿医療研究センター 社会学・老年科学研究センター フレイル研究部)
加齢に伴う不可避な変化とは別に、フレイルに係る指標が発見されることで、健康寿命を延伸する足掛かりになると期待しています。フレイルは、客観的指標が乏しいため、まだ十分に周知されていません。本研究が、医学研究におけるフレイルの位置づけに役立つ結果をもたらすことを願っています。
分担研究者
【国立長寿医療研究センター】
竹村真里枝、細山徹、重水大智、松井康素、大塚礼
【国立循環器病研究センター】
森雅樹、山本正道
【国立国際医療研究センター】
坊内良太郎
【国立精神・神経医療研究センター】
住吉太幹
【国立がん研究センター】
松岡弘道、里見絵理子、成田年
【国立成育医療研究センター】
岡村浩司