COVID-19血清抗体実用化支援(緊急課題)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を制御するには、今現在新型コロナウイルスに感染している人を診断するPCR検査法に加えて、症状の有無に関係なくこれまでに感染した人を診断する血清抗体の診断も重要です。ワクチン接種者の臨床試験などから、血清抗体を持つ人は新型コロナウイルスに感染しにくいことがわかりました。また、重症化しにくいということもわかりつつあります。しかし、日本で第1波が来ていた2020年5月時点では、血清抗体診断の試薬で、血清にどのくらいの量の抗体が存在するのか定量可能で、しかも、新型コロナウイルス以外のウイルスに対する抗体を間違って検出することが少ない試薬はほぼありませんでした。
JHは血清抗体検出試薬の早急な実用化が必要と判断し、正確な定量が可能な化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)による血清抗体検出試薬を開発しているシスメックス株式会社と国立国際医療研究センター、国立がん研究センターとの共同研究の支援を開始しました。
共同研究の結果、新型コロナウイルス陽性を確認された患者血清では検出できるはずの抗体が定量的に検出できること、抗体が存在するはずがない新型コロナウイルス出現前の保存血清では間違って新型コロナウイルス抗体を検出することがほぼないこと、の両方が確認できました。成果は、2020年6月11日にプレスリリースを行い、その後、シスメックス社から研究用検査試薬としての提供が開始されました。
また、6つのナショナルセンターにおいても「ナショナルセンター職員における新型コロナウイルス感染症の実態と要因に関する多施設共同観察研究」が実施され、実用化した測定法が活用されています。
研究のイメージ図
期待される効果
- COVID-19抗体検査方法の開発と実用化
- 抗体検査による国内の感染動向の把握と社会生活・経済活動正常化への支援
- 6NC連携強化と疫学調査の参画
- 産学共同研究による医師・研究者の育成
主任研究者
濱田 哲暢(国立がん研究センター 研究所 分子薬理研究分野 分野長)
2020年に全世界的に発生したCOVID-19感染におけるパンデミックとなり、社会活動・経済活動も制限され、日本全体もパニック状態でした。感染状況の実態把握には、精度が保証された検査方法の実装化が不可欠です。そこで、当研究班では、高感度かつ定量性が保証された抗体検査方法の臨床導入を目指して、国立国際医療研究センター、シスメックスの協力を得て、研究開発を進め、短期間で研究用試薬として国内で利用可能となりました。今後は、開発された検査方法をがん患者および健常人における感染状況と免疫状態の把握、疫学研究への応用が期待されます。
分担研究者
【国立国際医療研究センター】
・研究所 難治性ウイルス感染症研究部
満屋裕明、前田賢次、松田幸樹
【国立がん研究センター】
・研究所
柳下薫寛、吉野友美