6NC ライフ・メディカル研究を加速するミニ臓器-バイオメディカル技術連携基盤構築
研究者が医学・医療の発展のために行う基礎研究では、これまで生体の最小単位である「細胞」を使用してきました(試験管内の研究において)。しかし、病気の理解のためには、「組織」や「臓器」のように、「細胞」を集まりとして捉え、生体内の器官発生(臓器の成りたち)や疾患に関連する組織生理機能を試験管内で再現することも必要です。そのためには、試験管内で組織や臓器を作り出す(ミニ臓器またはオルガノイド)幹細胞技術が基盤となります。
一方、創薬の分野では、がん、希少遺伝性疾患、複雑な多因子疾患の治療など、個別化医療に患者固有の代替システムとして貢献することにも期待されています。
オルガノイドの技術進歩は、基礎研究のフェーズから産業、医療の実利用開発フェーズへ進んでいますが、この点において日本の研究開発スピードは世界を先導する状況にはなく、欧米ではすでに産業利用を見据えたヒトオルガノイドプロジェクトが開始されています。
本研究では、オルガノイドを作製する幹細胞技術を基盤として、各ナショナルセンター(NC)に特色づけられた疾患・病態研究を進めます。臓器がつくられるところから検証が必要となる先天性疾患、後期ライフステージとしてフレイル(加齢による心身の衰え)の予防も目指した、新規バイオモデル開発を行います。疾患研究では、各NCの特徴的な疾患を対象に経時的・時空間的に解析、評価を可能とする試験管内モデルを発展させ、病気の理解を促進させます。後期ライフステージ(フレイル等)や癌オルガノイドでは、からだの中にある幹細胞や癌組織の活用を精力的に進めて行きます。新たな研究領域でもあるため、世界的な視点からELSI(倫理的・法的・社会的課題)も考慮し社会への透明性のある研究環境を整えていきます。疾患横断的検討、また広いライフステージをカバーするライフ・メディカル研究を、6NCが連携して取り組むことにより日本の医学研究を効率的・効果的に進展することができると私たちは考えています。
研究のイメージ図
期待される効果
- オルガノイド研究を共通コンセプトとして、NCが連携してバイオメディカル研究を推進します。
- 希少遺伝病、複雑な多因子疾患、悪性腫瘍や加齢モデルなどの研究を支援・加速するため、共通のバイオモデルコンセプトを構築します。
- 各NCの研究者間コミュニティを橋渡し、コラボレーションを促進する包括的な研究環境も創出していきます。
- 世界に伍する次世代オルガノイド実証研究開発が促進されます。
主任研究者
阿久津英憲(国立成育医療研究センター、再生医療センター、センター長)
医学研究や治療法の新たな技術として定着しつつあるオルガノイド/ミニ臓器技術を、各NCで特徴づけられるモダリティあるいはライフコース研究に対して横断的に活用する研究開発を実施します。研究者間コミュニティを橋渡し、コラボレーションを促進する包括的な研究環境も創出することでNCが連携し次世代のライフ・メディカル研究を先導していきます。
分担研究者
【国立がん研究センター】
研究所 今井俊夫
【国立国際医療研究センター】
研究所 大河内仁志
臨床研究センター 山本圭一郎
【国立精神・神経医療研究センター】
研究所 青木吉嗣
【国立長寿医療研究センター】
研究所 細山徹
【国立循環器病研究センター】
研究所 菊地和