糖尿病母体から出生した児の肥満・耐糖能異常の予防に関する研究
本研究は、日本人の糖尿病患者における妊娠中の血糖値の状態を明らかにするものです。糖尿病の妊婦さんでは、耐糖能(上昇した血糖値を正常に保つ能力)が正常な妊婦と比較して、母児ともに妊娠転帰がよくないことが知られいます。特に在胎不適当過大児(90%tile以上の出生体重)の割合は、正常耐糖能の妊婦では10%程度にとどまりますが、日本において妊婦さんが1型糖尿病の場合は45.8%、2型糖尿病の場合32.4%と高い確率になっています。さらに、母体糖尿病がある在胎不適当過大児は、生まれた赤ちゃんの将来の肥満、糖尿病のリスク因子であることが明らかにされています。
在胎不適当過大児の原因は、母体妊娠前の肥満、妊娠中の過度な体重増加量、妊娠中の胎児高血糖曝露で、母体糖尿病の妊婦から生まれる在胎不適当過大児を予防するためには、妊娠中の血糖をコントロールすることが不可欠です。
近年、間質液(細胞と細胞の間にある液体)を連続的に測定することで血糖値を推定する医療機器=持続グルコースモニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)によって、24時間の血糖値が連続的に可視化できるようになりました。しかし、非妊婦では多く使用されていますが、日本において糖代謝異常の大部分を占める2型糖尿病を含む日本人糖尿病合併妊娠患者のCGMを用いた血糖プロファイルは明らかにされていません。
そこで本研究では、糖尿病で妊娠された方に妊娠中にCGMを装着していただくことで、日本人糖尿病合併妊娠の血糖推移を明らかにします。
本研究から得られた結果を用いて実臨床において血糖をコントロールすることにより、在胎不適当過大児を減らすことができれば、生まれた赤ちゃんの将来の肥満や耐糖能異常の減少といった長期的健康増進に繋がることが考えられます。さらに、慢性疾患の予防、それらにともなう社会的な医療費削減など、幅広い効果が得られることも期待できます。
研究のイメージ図
期待される効果
- 持続グルコースモニタリングに基づいた、日本人糖尿病合併妊娠患者の血糖推移を明らかにする。
- 在胎不適当過大児に関連する因子を探索的に明らかにする。
主任研究者
川﨑麻紀(国立成育医療研究センター 政策科学研究部)
24時間の血糖値を連続的に可視化できる持続グルコースモニタリング(CGM)を用いて、日本人糖尿病合併妊娠患者の血糖プロファイルを明らかにします。そこから得られた結果を用いて、実臨床において血糖をコントロールすることにより、在胎不適当過大児を減らすことができれば、生まれた赤ちゃんの肥満や耐糖能異常の減少といった長期的健康増進に繋がり、社会に貢献できる研究であると考えています。
分担研究者
【国立成育医療研究センター】
・母性内科
荒田尚子
【国立国際医療研究センター】
・糖尿病内分泌代謝科
小谷紀子、寺川瞳子