神経内分泌分化を有するがんの臨床病理学的特徴の検討と治療奏効・予後予測
この研究は、病勢が比較的急速で、かつその希少性から標準治療が確立されていない、神経内分泌分化によって特徴づけられているがんに関して、その臨床病理学的特徴を明らかにすることで、その病態の解明と新規治療法の開発に貢献することを目標している研究です。
かねてから、臓器横断的な様々ながん種において、神経内分泌分化によって特徴づけられているがんが一定数認められてきました。最も神経内分泌分化が多く認められるのは肺がん(小細胞肺がん)ですが、それ以外の臓器でも神経内分泌分化がんは認められています。一般的に神経内分泌分化がんは、小細胞肺がんを含めてその病勢の進行が速く、予後は約1年と言われ、予後不良ながんとされてきました。にも関わらず、その希少性から神経内分泌分化がんの臨床病理学的な特徴は不明であり、したがって標準治療は確立していません。最近の小細胞肺がんの研究では、その神経内分泌分化の程度(高い、低い)が、異なる生物学的特徴を捉え、異なる治療法に対する効果を予測する可能性が見出されてきました。
そこで当研究では、そうした神経内分泌分化がんをまず網羅的に調査し、その臨床的、病理学的な特徴、その経過、治療に対する反応、さらにがん遺伝子変異・発現を詳細に明らかにすることで、今後の治療を含めた開発に繋がる特徴を探索することを目的としています。神経内分泌分化は肺がんに限らず臓器横断的に認められる点、並びに基礎、臨床、病理、がん遺伝学的な多角的観点からのアプローチが必要である点から、この研究は、国立高度専門医療研究センターが協力して行う必要があるものと考えています。
研究のイメージ図
期待される効果
- 難治性希少悪性腫瘍である神経内分泌分化がんにおいて、新たな臨床病理学的特徴のエビデンスの構築や治療の開発に貢献できる
- 小細胞肺がんで示唆されているような、神経内分泌分化の程度による異なる治療法の効果予測(=バイオマーカー開発)となる可能性があり、この結果を元に、標準治療の確立していない神経内分泌分化がんにおける新規の前向き医師主導治験へとつなげることができる
- 神経内分泌分化がんのがん遺伝学的特徴を明らかにすることで、神経内分泌分化がんにおけるがん遺伝学的な新規エビデンス、ひいてはそれらをターゲットとした治療法の開発に寄与することができる
主任研究者
高橋 信行(国立がん研究センター東病院 腫瘍内科)
私は米国国立衛生研究所/国立がん研究所(National Institutes of Health/National Cancer Institute)で小細胞肺がん、神経内分泌分化がんの早期臨床試験、translational researchを行いました。そうした最先端の施設でも、神経内分泌がん患者さんに対する治療開発は劇的には進んでいない現状を目の当たりにしてきました。その留学で得た知識、ノウハウを元に、この研究が将来治療開発へと繋がり、患者さんに還元できるよう貢献したいと考えています。
分担研究者
【国立がん研究センター東病院】
腫瘍内科
楠原 正太
【国立国際医療研究センター病院】
乳腺・腫瘍内科
安藤 健樹