日本人女性における妊娠糖尿病と妊娠期抑うつ傾向との関係に関する研究
妊娠糖尿病と周産期うつ病は周産期にみられる主要な合併症で、世界的に増加傾向にあります。日本においても、妊娠糖尿病は妊娠期の最も多い母体疾患となっています。また、うつ病も周産期に高率に発症する疾患です。2013年頃までは産褥期に発症する産後うつ病が注目されていましたが、近年では妊娠期のうつ病が産後うつ病の最も大きなリスク要因であるといわれ、妊娠期を含む抑うつ傾向を把握する重要性が認識されています。妊娠糖尿病と周産期うつ病・抑うつ傾向が併存した場合には、妊娠高血圧症候群や早産等の発症率が高くなることが報告されています。さらに両疾患ともに、母と子の健康に短期的・長期的に重大な影響を及ぼすことが明らかになっています。
一般的な糖尿病とうつ病は併存疾患であり双方向性の関係があるといわれています。海外では既に周産期に起きる妊娠糖尿病と周産期抑うつ傾向との関係が調査されていますが、その結果には一貫性がありません。結果に一貫性がない理由として国による診断基準の違いや人種の違い、経済状況・社会支援の状況の違いが影響していると言われています。これまでに日本人女性を対象とした妊娠糖尿病と抑うつ傾向との関係は調査されていません。
そこで本研究では、日本人において妊娠糖尿病と周産期抑うつ傾向との関係を調査し両疾患の関係を明らかにします。なお、今回は妊娠期のうつ病が産後うつ病の最も大きなリスク要因であることを踏まえ妊娠期に焦点を当て調査を行います。また、妊婦健康診査を受診している妊婦を対象に妊娠期に3回アンケート調査を行います。
研究のイメージ図
期待される効果
- 妊娠糖尿病になりやすい人の予測や早期発見に結び付く可能性があります。
- 周産期に抑うつ傾向になりやすい人の予測や早期発見に結び付く可能性があります。
- 妊娠糖尿病や抑うつ傾向に関して妊婦に行われる保健指導の内容検討に貢献できます。
主任研究者
戸津有美子(国立国際医療研究センター 国立看護大学校 成育看護学 助産学)
日本は、妊産婦死亡率が世界の中で最も低い国と言われていますが、妊産褥婦の自殺率は高いといわれています。また、出産年齢の上昇に伴い、なんらの合併症を有する妊婦は増加傾向にあるといわれています。女性の心身の健康は、女性だけではなく子どもや家族にも影響を及ぼします。
私たちの研究活動が、妊娠糖尿病または抑うつ傾向の予防や早期発見につながり、女性と子ども・家族をサポートする一助になるよう願っています。
分担研究者
【国立国際医療研究センター】
●産婦人科
中西美紗緒