褐色細胞腫/パラガングリオーマに対するリキッドバイオプシー系の構築
本研究は、副腎髄質にある腫瘍=褐色細胞腫/パラガングリオーマ(以下、PPGL)における腫瘍由来DNAを用いたリキッドバイオプシーの解析系を構築することを目的として行うものです。
リキッドバイオプシーは、リキッド(液体)+バイオプシー(生体検査)を指しており、血液中を循環している腫瘍細胞由来のセルフリーDNA(破壊されたり、死滅した細胞に由来するDNA)を調べることによって、腫瘍の存在や性質を、リアルタイムかつ低侵襲で調べることができる検査法です。
PPGLは、カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン)を産生する副腎髄質および傍神経節(神経細胞の集まり)から発生する腫瘍です。PPGLを持つ患者さんは、高血圧、頭痛、動悸、震えなど多彩な症状を呈します。他の腫瘍と異なり、PPGLでは悪性の診断が遠隔転移の存在によってのみ定義されるため、すべてのPPGLは潜在的に悪性として扱わねばならず、生涯にわたる経過観察が必要となります。しかし、現在用いられている血液・尿検査や各種の画像検査にはそれぞれ限界があり、それを補完する新たな経過観察法が望まれます。
本研究では、研究参加に同意が得られた成人PPGL患者さんから摘出された腫瘍の遺伝学的特徴を調べ、その特徴を指標に半年~1年ごとに血液検査でリキッドバイオプシーを行います。そしてリキッドバイオプシーの結果と患者さんの臨床経過との関連性を調べることで、PPGLにおけるリキッドバイオプシーの意義を検討します。
研究のイメージ図
期待される効果
- PPGLにおける新たな経過観察法として、リキッドバイオプシーの活用が期待できる。
- 世界初のPPGLに対するリキッドバイオプシーの研究であるため、世界のPPGL診療向上に寄与できる。
- 腫瘍のもつゲノム情報を網羅的に調べることにより、最適な薬剤を選択する「がんゲノム医療」をPPGL診療においても実践する布石になる。
主任研究者
中尾佳奈子(国立成育医療研究センター 研究所 分子内分泌研究部)
私は内分泌内科医として臨床の場にいたころ、多くの悪性PPGLに罹患した患者さん達と接しました。そして、もっと患者さん達の役に立ちたいと願っていました。その後、先天性内分泌疾患の研究に携わり、今回の研究に用いる遺伝子解析技術を身に着けました。本研究では、同じ志を持つ若手研究者で連携し、PPGLの臨床的課題に取り組んでいきたいと考えています。
分担研究者
【国立国際医療研究センター】
・糖尿病内分泌代謝科
内原正樹
【国立国際医療研究センター】
・臨床ゲノム科
高野梢