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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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ライフコースのメンタルヘルス課題についての疾患レジストリを活用した6NCによる共同研究プロジェクト

精神疾患に限らず、思春期を含むがん、循環器病、糖尿病などの非感染性疾患(Non-Communicable Disease: NCD)においても、メンタルヘルスの問題は患者のQOLや就労・就学といった社会生活に影響を及ぼします。そのため、メンタルヘルスの課題に、疾患や年代ごとに取り組むよりも、6つのナショナルセンター(6NC:国立がん、国立循環器、国立精神・神経、国立国際、国立成育、国立長寿)が共同で研究する体制を作ることで、ライフステージを横断的で包括的に扱うことができ、より普遍的で主観的な満足感を伴った健康寿命の延伸につながることが期待されます。
本研究の目的は、NCDの医療におけるメンタルヘルスの意義を検討することです。そのために、患者レジストリ(疾患登録システム)を構築し、集めたデータをもとに、メンタルヘルスとNCDとの双方向的な関連性(例えば、メンタルヘルスが身体疾患の転帰に及ぼす影響やNCDに伴う炎症性変化がメンタル面に及ぼす影響)、及びメンタルヘルスの問題がNCD患者のQOLや社会生活にどのような影響を及ぼすのかを明らかにします。加えて、個別の身体疾患だけではなく、複数の身体疾患に共通するメンタルヘルス関連の生物学的マーカー(生体分子)についての探索も行います。
また、1年後の身体疾患、QOL等の転帰(症状の経過や結果)を予測する因子として、社会的環境因子(就学、就労、世帯構成、社会資源)、身体症状、生物学的マーカーとの関連について検討し、病状の経過にメンタルヘルスが及ぼす影響についても明らかにします。さらに、抽出された生物学的マーカーに関して、培養細胞あるいは実験動物を用いて詳細に解析することによって、メンタルヘルスに関連する機構の解明を目指します。

研究のイメージ図

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期待される効果

本研究を通じて、各NCDにおける心的苦痛の実態を把握し、その要因を明らかにすることで、患者の苦痛の緩和やQOLの向上につながることが期待されます。身体症状が重篤である場合は、当然ながら身体症状がメンタルヘルスに強く影響することが予想されます。一方、身体症状が改善しても、身体疾患に対する不安や、行動の制約に伴う苦痛、炎症等に伴う生体変化によって生じるメンタルヘルスの不調等、様々な要因によって心的苦痛はもたらされます。他方、メンタルヘルス不調が身体疾患の転帰にどのような影響を及ぼすかを明らかにし、身体疾患の転帰も視野に入れたメンタルヘルスサポートのあり方が明らかになることが期待されます。さらに、生物学的マーカーに関する実験解析によって、メンタルヘルスに関わる生体メカニズムが明らかにされれば、根本的な治療法の開発につながる可能性もあります。

主任研究者

中込和幸(国立精神・神経医療研究センター 理事長)

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本研究に参加する6つのナショナルセンターは国立高度専門医療研究センターとして、NCDの広い領域を網羅しており、各専門領域における臨床情報・生体試料を収集しています。それらと本研究で共有するメンタルヘルスに関する情報との関連を検討することで、信頼性の高い知見が得られることが期待されます。
近年は、メンタルヘルスの不調が脳のみに由来するものではなく、炎症、免疫、糖・脂質代謝など、全身性の要因による可能性が示唆されています。すなわち、NCDとメンタルヘルスの双方向性の関連性について検討することは、主観的満足感を伴う健康寿命の延伸につながる重要な課題と考えています。

分担研究者

【国立精神・神経医療研究センター】
・神経研究所病態生化学研究部
 星野幹雄

・病院
 髙橋祐二、大町佳永、竹田和良、池澤聰、雑賀玲子

・神経研究所微細構造研究部
 一戸紀孝

・精神保健研究所精神疾患病態研究部
 橋本亮太

・精神保健研究所児童・予防精神医学研究部
 住吉太幹

・トランスレーショナル・メディカルセンター
 小居秀紀、森尾保徳、立森久照


【国立循環器病研究センター】
・病院
 疇地道代


【国立長寿医療研究センター】
・精神科部
 安野史彦


【国立国際医療研究センター】
・病院
 菊地裕絵、清水千佳子、加藤温

【国立成育医療研究センター】
・こころの診療部
 立花良之、多門裕貴

【国立がん研究センター】
・中央病院
 内富庸介、松岡弘道、後藤真一

・社会と健康研究センター
 藤森麻衣子