小児・AYA世代のがん患者の全国ゲノム診断プラットフォームの構築と長期サバイバーシップ支援に関する研究
【全国ゲノム診断プラットフォームの構築】
多様な希少がんから構成される小児・AYA世代のがんには、診断や予後等と関係する遺伝子異常が多数知られており、ゲノム検査に基づく正確な診断とリスク分類、治療開発等によって治療成績の改善が期待されています。現在、保険診療で用いられる遺伝子パネル検査は、小児・AYA世代のがんに特徴的な遺伝子異常を十分に含んでおらず、小児・AYA世代のがん患者にも対応した遺伝子パネル検査の開発が求められています。海外で一部、小児がん用の遺伝子パネル検査の開発も行われているものの、診断・リスク分類に必要な遺伝子異常を十分にカバーするものになっていません。一方、日本では、本研究の分担研究者らが関与して小児がん・AYA世代のがんの診断・リスク分類・治療に有用な遺伝子を網羅的に搭載した「新Todai OncoPanel(TOP2)」検査の開発が進められています。本研究ではこのパネル検査を用いて全国ゲノム診断プラットフォームの構築を行います。
【長期サバイバーシップ支援】
小児がんの5年生存率は1970年代の58%から、1990年代には84%に改善し、医学の進歩とともに小児がんサバイバーは増加傾向にあります。一方でがんサバイバーの約10%には治療後の晩期合併症による重篤な健康問題が生じているとされており、晩期合併症の病態研究や治療管理等の重要性が指摘されています。しかし、小児・AYA世代のがんの希少性と専門性のために、特に日本での研究は必ずしも進んでいるとは言えません。小児・AYA世代のがんサバイバーの長期サバイバーシップ向上のために解決すべき問題は、身体・精神・社会面と多岐にわたるため、多方面の専門的知見を集結させて解決を図る必要があります。そこで本研究では、各分野に高い専門性と研究実績を持つ6つの国立高度専門医療研究センターが協働して、日本発の小児・AYA世代のがんサバイバーの晩期合併症対策に関するエビデンスを創出します。
研究のイメージ図
期待される効果
各専門性を有するNCの横断的な連携により、小児がん・AYA世代のがんの特性に対応したゲノム医療の体制基盤を構築するとともに、晩期合併症等に関する課題を解決することで、小児・AYA世代のがん患者・サバイバーの長期サバイバーシップ支援に貢献します。
主任研究者
鈴木達也(国立がん研究センター 中央病院血液腫瘍科)
小児がんやAYA世代のがんは、患者さんの数が少ないことから希少がんとも呼ばれ、診断法や治療薬等の研究開発が難しいとされています。私たちは、ゲノム医療によって、正確な診断や予後予測をおこない、新しい治療標的を見つけ出すことで、より良い治療を患者さんに届けられるようにしていきたいと考えています。また、患者さんが治療後も安心して生活していただけるように、がんを克服した後に起きる晩期合併症の解決を目指して、力を合わせて研究を進めていきます。
分担研究者
【国立がん研究センター】
・基盤的臨床開発研究コアセンター
市川仁
・脳腫瘍連携研究分野
市村幸一
・細胞情報学分野
高阪真路
・ゲノム生物学研究分野
河野隆志
・小児腫瘍科
小川千登世、野上由貴
・先端医療科
山本昇
・病理診断科
谷田部恭、吉田朗彦
・骨軟部腫瘍・リハビリテーション科
岩田慎太郎、川井章、福島俊
・小児腫瘍科
熊本忠史
・眼腫瘍科
鈴木茂伸
・精神腫瘍科
平山貴敏
・臨床検査科
角南久仁子、久保崇
・遺伝子診療部門
平田真
【国立成育医療研究センター】
・小児がんセンター
松本公一、瀧本哲也、加藤元博、清谷千賀子
・病理診断部
義岡孝子
【国立国際医療研究センター】
・第一小児科
七野浩之、清水千佳子、山中純子、下澤克宜、瓜生英子
・産婦人科
大石元
・糖尿病内分泌代謝科
田邊晶代
・循環器内科
久保田修司
【国立循環器病研究センター】
・研究所再生医療部
細田洋司
【国立長寿医療研究センター】
・整形外科部
酒井義人
・整形外科部
若尾典充、松井寛樹、渡邊剛
【国立精神・神経医療研究センター】
・精神保健研究所
池澤聰