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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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抗腫瘍薬による胎盤形成・機能障害メカニズムの解析基盤の作出

研究概要

近年、がん治療成績は目覚ましい向上をみせています。それに伴い、多くのがんではいかに治療を生き抜くか、という時代から、いかに治療中、治療後の患者さんの生活の質を向上させるか、ということを議論する時代となってきています。特に、Adolescent and Young Adult (AYA) 世代のがん患者さんは、治療中、治療後に様々なライフイベントに直面するため、社会として個々に合わせたサポートを今後ますます充実させていく必要があります。AYA世代のライフイベントの中で、妊娠・出産は最も大きなもののうちの一つですが、近年の晩婚化、母体年齢の上昇により、妊娠中に発見されるがんの頻度は上昇傾向であり、課題となっています。

妊娠中のがん治療は、お母さんに対して最善のがん治療を行いつつ、かつ赤ちゃんへの不利益を最小限にする、という原則の下行われます。抗がん剤を用いた治療は、妊娠中のがん治療の中心的な役割を担います。抗がん剤は、薬の種類によって異なるものの、赤ちゃんが臓器を作っている期間(妊娠初期)を過ぎたら使用可能であり、リスクを大きく上回るベネフィットが報告されています。

胎盤は、妊娠中に赤ちゃんを育てる最も重要な臓器です。赤ちゃんを育てる他にも、お母さんに投与された薬をブロックするなどの働きもしています。これまで、妊娠中の抗がん剤の影響に関しては、多くの場合赤ちゃんに対する直接的な影響を元に評価されてきました。一方で、赤ちゃんを育てる役割を担う胎盤に関しては、抗がん剤が何かしらの影響を与えるのか、あるいは与えないのかに関して、はっきりしたことはほとんどわかっていません。

そこで、本研究では、抗がん剤が胎盤にどのように影響するかを、胎盤を形成する細胞(栄養膜細胞)モデルを用いて検討するとともに、妊娠中にがん治療を経験した妊婦さんの情報や胎盤を収集し、その後の解析の基盤を確立します。

研究のイメージ図

研究のイメージ図

期待される効果

  • 抗がん剤が胎盤に与える影響と、そのメカニズムを明らかにできます。
  • もし何かしらのリスクが明らかになった場合、それを防ぐ手立てについて、メカニズムの観点から検討を進められるようになります。
  • 妊娠中の抗がん剤治療のリスクとベネフィットについて、患者さん、医療者も、より深く理解ができるようになります。
  • 妊娠中に抗がん剤治療が必要な患者さんたちが、より納得、安心して治療を受けていただけるような情報提供が可能となります。

主任研究者

本村健一郎(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 上級研究員)

本研究では、実際に妊娠中のがん診療に携わっている先生方と密に連携して、臨床研究と基礎研究の双方から、抗がん剤が胎盤にあたえる影響を検討します。妊娠期間中にがん治療を受ける患者さんたちは、ご自身の体の状態に加えて、赤ちゃんへの影響にも大きな不安を持っていらっしゃいます。その不安を少しでも軽減できるよう、臨床上有益な情報を発信していきたいと思います。

本村 健一郎

分担研究者

【国立がん研究センター中央病院】
腫瘍内科
齋藤亜由美

研究協力者

【聖路加国際病院】
腫瘍内科
北野敦子

【国立がん研究センター中央病院】
腫瘍内科
下井辰徳