看護ケアにおける薬剤耐性緑膿菌の伝播経路の推定
研究概要
抗菌薬が効きにくい薬剤耐性緑膿菌による感染症は、治療が困難で、患者の予後や死亡率に多大な影響を及ぼすため、病院では薬剤耐性緑膿菌の伝播を予防することが重要となります。
本研究では、薬剤耐性緑膿菌が病院内でどのように伝播したのかを推測し、看護ケアなど伝播の要因となるものを明らかにすることを目的としています。
研究方法は、はじめに分子疫学的解析を行います。分子疫学的解析では、国立国際医療研究センターで検出された薬剤耐性緑膿菌を対象とし、それぞれの遺伝子を調べます。同じ菌でも系統は異なり、同じ遺伝子をもつ同一由来の薬剤耐性緑膿菌は病院の中で伝播した可能性が考えられます。その同一由来の薬剤耐性緑膿菌を明らかにするために、遺伝子データをもとに家系図のような系統樹を作成します。
次に、同一由来と考えられる薬剤耐性緑膿菌が検出された患者の診療録をもとに、先行研究で伝播の要因と明らかになっている患者要因(年齢、疾患等)や医療要因(医療器具や抗菌薬の使用等)だけでなく、本研究では患者に実施した看護ケア(吸引、清拭、オムツ交換、マウスケア、手指衛生使用回数など)などが行われていたかも調査します。
以上の分子疫学的解析結果と診療録調査による臨床情報を統合し、本研究では、薬剤耐性緑膿菌の伝播経路の推定とリスクとなったケアを明らかにします。
本研究の結果は、今後の薬剤耐性緑膿菌の伝播予防に活かすことができ、病院内の感染対策に寄与することができます。
研究のイメージ図
期待される効果
- 薬剤耐性緑膿菌の伝播予防に活かすことができる
- 薬剤耐性緑膿菌の感染が減少する
- 病院における感染対策の向上に寄与できる
主任研究者
国立看護大学校(研究課程部 感染管理看護学 窪田志穂)
私は、感染管理認定看護師/感染症看護専門看護師の資格を持っており、病院の院内感染管理室に所属し、耐性菌対策を実施していました。院内感染管理室での業務の中で薬剤耐性緑膿菌のアウトブレイクを何度か経験しており、伝播予防の対策の重要性を感じています。本研究で薬剤耐性緑膿菌の伝播経路とその要因となるケアを明らかにすることで、今後の薬剤耐性緑膿菌の伝播予防に活かしていきたいと考えています。
分担研究者
【国立国際医療研究センター病院】
国際感染症センター
秋山 裕太郎