メニューにジャンプ コンテンツにジャンプ
国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

トップ > 事業の概要 > 若手研究助成課題 > 若手研究助成課題(2023年度) > 原発性アルドステロン症における生殖細胞系列バリアントと心血管系合併症の関連研究

原発性アルドステロン症における生殖細胞系列バリアントと心血管系合併症の関連研究

研究概要

日本の高血圧患者数は、4000万人に上ると推定されています。高血圧を放置していると脳卒中や心臓病を起こす可能性が高まりますが、高血圧患者のおよそ3人に2人は、血圧を至適なレベルで管理できていないと言われています。その理由の一つとして、「二次性高血圧」と呼ばれるタイプの高血圧の存在が挙げられます。中でも、二次性高血圧の代表的疾患である原発性アルドステロン症(PA)は、PAでない一般的な高血圧よりも高頻度に心血管系合併症を発症することから、高血圧診療で特に重要な疾患です。

PAの診断は必ずしも簡便ではないため、その多くが見逃されており、潜在的な患者数は相当数に上ると考えられています。また、一部のPA患者さんは、内服薬だけでは効果が不十分で、手術が必要となりますが、その適応やタイミングを見極めるのが難しいことがあります。

これまでPAの遺伝的要因は大部分が不明とされてきましたが、最近になって、ゲノムワイド関連解析(GWAS)という遺伝統計学の手法によって、PAと関連する遺伝子型が少しずつ明らかになってきました。しかし、PAの重症度や病型ごとに分けた解析や、日本人での検証は十分になされていません。

本研究は、日本人のPA患者を対象として、PAの罹患や、重症度・病型の違いに関わる遺伝的要因を確かめることを目指しています。具体的には、PA患者集団の遺伝子型とPAを持っていない別集団の遺伝子型を比較し、その違いを統計学的に解析することでPAに関連する遺伝子型を検証します。この研究結果によって、PAの病態理解が深まるだけでなく、患者個人ごとのゲノム情報や検査所見の違いを考慮した精密医療が可能となることを期待しています。

本研究では、医療研究連携推進本部(JH)が支援している、ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN)に蓄積されてきた試料を利用します。このようにして複数のナショナルセンターから多くの患者様のデータを集めることで、より信頼性の高い結果が期待できます。

研究のイメージ図

研究のイメージ図

期待される効果

PAの病態についての理解を深め、さらには、ゲノム情報を活用した、より精密化された診療ガイドラインの策定に貢献することを目指しています。

主任研究者

富所大輝(国立国際医療研究センター 循環器内科 レジデント)

高血圧患者の一部には、通常の高血圧とは病態の異なる、原発性アルドステロン症(PA)と呼ばれる特殊な副腎の病気が背景に潜んでいます。未知な部分が多い、PAの遺伝的な要因が解明されれば、高血圧やPAに関する病態理解が深まるだけでなく、患者さん1人1人に最適化した診療を提供できるようになるかもしれません。本研究が、その一助となることを願っています。

富所 大輝

分担研究者

【国立循環器病研究センター】
メディカルゲノムセンター上級研究員
園田桂子