6NC連携のNDB研究基盤による重点疾患の疫学・政策研究の推進
研究概要
厚生労働省が提供する匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)は、疾患や医療に関する調査や政策提言に欠かせない情報源となっています。このデータは医療計画の指標作りや抗菌薬の使用状況調査など、さまざまな場面で活用されています。近年、NDBの利用範囲も広がっており、2018年には介護データとの連結、2022年には死亡票との連結が進みました。また、2023年に改正された次世代医療基盤法により、さまざまな情報との連携解析が可能になりました。さらに、厚生労働省は、クラウド上での新たなデータセットの提供を開始しました。これによりNDBデータへの申請と承認に要する時間を1週間程度に短縮すると期待されています。
本研究班は、2019年度からは、厚労科研「6NC連携による医療政策研究等を目的としたNDB研究体制構築のための研究」から始まり、翌年には国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)の研究班となりました。データの申請過程では想定外の問題もありましたが、2023年9月に全NCに特別抽出データが届きました。現在解析が進められており、2024年1月以降にその結果を順次公開しています。今年度中には基盤的な解析を終え、重点疾患や複数NCに関連する疾患についてのさらなる研究が可能になる見込みです。
さらに、本研究班においては、疾患分布や診療内容の推移を調査する基盤的な研究を着実に進め、医療や政策の課題を早期に把握することを目指しています。また、得られたデータを基に政策提言を行い、臨床や疫学研究の促進にも役立てる予定です。さらに、政府などから迅速なデータ提供を求められることも増えているため、NDB研究を推進するための体制や人材育成も重要な課題として取り組む予定です。
研究のイメージ図
期待される効果
- 臨床・疫学・政策上のエビデンスの創出
疾患の有病者数、発生数等のサーベイランスとしての疾患情報をHP上での公開や学術論文の出版などを通じて発信します。 - 上記成果を用いた政策提言や政策評価
疾患のリスク因子、診療の質、医療費 等、政策への指向性の高い解析を行い、厚生労働省、こども家庭庁などへの情報提供を通じて、Evidence-Based Policy Making(EBPM)に貢献します。 - NDB研究領域の研究推進支援
上記の疾患情報に加えて、レセプトから得られる情報を組み合わせての疾患定義、スコーピングレビュー、マスター作成に寄与するソフトウェアなどの情報を公開します。 - NDB研究を行う人材の育成
継続的なNDB解析を支える体制構築、6NC内外での人材育成を積極的に行い、世界に冠するレセプトデータベースであるNDBの有効活用推進に貢献します。 - 有事における政府等の要請に応じた解析
有事等でスピーディに発生動向、リスク因子等をまとめて報告する必要の生じる際に、迅速かつ適切に解析を行う体制を整備します。
主任研究者
磯博康
国立国際医療研究センター
国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター
グローバルヘルス政策研究センター長
「6NC連携による医療政策研究等を目的としたNDB研究体制構築のための研究」(2019-2023年度)、「6NC連携のNDB研究基盤による重点疾患の疫学・政策研究の推進」(2024-2026年度)の研究代表者の磯博康です。
6つのナショナルセンターは、それぞれの組織において、がんその他の悪性新生物、循環器病、精神・神経疾患、感染症その他の疾患、成育に係る疾患、加齢に伴う疾患を専門としていますが、共通して臨床や研究、人材育成の役割を担っています。また、これらの視点から保健・医療に関する政策提言を行うことが求められています。
研究班では、NDBを活用することで疾病の有病・発生状況、診療の質、医療費、特定健診結果に関する調査・解析、今後の傾向や対策の予測・公表、及びNDB研究の発展に役立つ体制づくりや人材育成について6NCで協力して取り組み、我が国の医療政策の立案や国民の理解に役立つ情報基盤の構築を目指しています。
分担研究者
国立がん研究センター
- がん対策研究所 医療政策部
石井太祐
国立循環器病研究センター
- 予防疫学・疫学情報部
西村邦宏
国立精神・神経医療研究センター
- トランスレーショナル・メディカルセンター
小牧宏文 - 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部
臼田謙太郎
国立国際医療研究センター
- AMR臨床リファレンスセンター 臨床疫学室
松永展明 - 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター 肝疾患研修室
是永匡紹 - 糖尿病情報センター 医療政策研究室
杉山雄大
国立成育医療研究センター
- 政策科学研究部
竹原健二 - 社会医学研究部/女性の健康推進室
森崎菜穂
国立長寿医療研究センター
- 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部
土井剛彦 - 老年学・社会科学研究センター 医療経済研究部
大寺祥祐