遺伝難病・がんの機能喪失・獲得型バリアント情報収載データベース作成による、臨床支援アプリケーションおよび治療標的探索のシステム基盤構築
研究概要
遺伝子・ゲノムの解析技術の開発が進み、疾患にかかわるゲノム情報の蓄積が進んでいます。それらの情報は、難病の遺伝子診断、疾患病態を明らかにする基礎研究、そして疾患を克服するための創薬開発などに、大きく役立っています。
しかしながら、蓄積されたゲノム情報のうち、疾患の原因となる病原性バリアントとして登録されたものは一部であり、多くが未だ病的意義不明のバリアントのまま残されています。さらに、病原性バリアントと判断されるものでさえ、必ずしも疾患原因となるタンパク質の機能変化のような詳細な情報につながっているとは限らず、疾患の重症度や予後変化を予測したり、疾患の特徴を層別化したりできる情報として、臨床現場で利用できるようになるには、新たな情報の蓄積と詳細な解析が必要です。
臨床の現場では、検出されたバリアント情報を、原因の同定に用いるだけではなく、発症予測、重症化予測、予後推定を行うことに用いることができれば、診療に大きくつながると期待されています。研究の現場では、詳細な情報が付随したバリアントリストを用いて効率よく標的となるバリアントや遺伝子の検索を行い、治療対象を明確にし、迅速な創薬開発につなげられることが期待されています。
そこで本研究では、疾患原因となる代表的な遺伝子を対象に2つの手法、すなわち、①遺伝子バリアントがタンパク機能変化へ及ぼす影響の程度を類推する情報解析アルゴリズムを開発すること、②遺伝子バリアントを網羅的に細胞に導入のうえ細胞機能解析系から得られ情報をもとにバリアント機能を層別化するデータベースを構築すること、の取り組みを行い、その結果をパッケージングして疾患バリアントを理解できるデータベースを作ることを目的としています。
6NCが連携し、それぞれの特徴を生かして疾患の理解に取り組むことにより、医学研究と臨床診療における障壁を乗り越えることができる研究を行いたいと私たちは考えています。
研究のイメージ図
期待される効果
- 本研究成果を6NC間で共有し、評価・検証を行い、研究者らに広く共有し、診療と基礎研究に利用できる次世代型の疾患ゲノム情報プラットフォームを構築します。
- 基礎研究者にとっては創薬標的の効果的探索にも威力を発揮すると考えられます。
- 本研究によって得られる機能喪失型バリアント・機能獲得型バリアントの詳細な評価と、それに基づく症例病態の層別化は、医療への還元、個別化医療の推進に大きく寄与すると考えられます。
主任研究者
朝野仁裕(国立循環器病研究センター、ゲノム医療部門長・ゲノム医療支援部長・バイオバンク長)
ゲノム医療の実現、社会実装という目標を達成するには、診療医、研究者が使いやすい情報の蓄積が必要です。各疾患領域共通の課題と捉えて、どのような情報が入手できれば「患者さんへの還元」に近づくかを考えて本課題に取り組みます。情報共有・共同研究が促進できるように、そして最新の情報解析、網羅的基礎研究技術を積極的に活用し、各NCで蓄積された各疾患とそのゲノム情報を結びつけることができるように、その基盤となる情報解析プラットフォームを構築してまいります。
分担研究者
国立がん研究センター
白石航也
国立国際医療研究センター
三宅紀子
国立精神・神経医療研究センター
西野一三
国立成育医療研究センター
河合智子
国立長寿医療研究センター
尾崎浩一