新型コロナウイルス感染症流行後期におけるナショナルセンター職員の感染状況とプレゼンティーズムに関する多施設共同研究
研究概要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2023年5月、感染症法上の5類に移行したものの、その後も免疫逃避能力や感染力が強いウイルスによる流行が続いています。患者数は指定医療施設での定点把握となり、感染実態の正確な把握が困難になりました。働く世代では、重症化のリスクこそ低いものの、罹患や後遺症に伴う生活の質や仕事パフォーマンスの低下、さらにはクラスター発生時の病院機能の低下が懸念されています。冬季にはインフルエンザ等の季節性感染症の流行による負荷も加わります。2024年度に医師の働き方改革が本格化する中、感染症流行下での医療従事者の働き方を支援するための科学的な知見が求められています。
以上を踏まえ、本研究班では主に以下の点を明らかにするため、6つのナショナルセンター職員を対象に疫学調査を行っています。
- 未診断を含むSARS-CoV-2の累積感染率及び再感染率を、対象者の背景要因別に明らかにする。
- SARS-CoV-2に対する集団免疫の推移と、免疫の個人差を規定する要因(特にCOVID-19罹患とワクチン接種によるハイブリッド免疫)を明らかにする。
- 抗SARS-CoV-2抗体価(中和抗体を含む)と新規変異株感染リスクとの関連を明らかにする。
- COVID-19及びインフルエンザの後遺症の実態とその規定要因を明らかにする。
- ウイズコロナ期におけるプレゼンティーズム(仕事パフォーマンス低下)及びアブセンティーズム(欠勤)の実態と、その規定要因(職業ストレス要因)を明らかにする。
研究のイメージ図
期待される効果
- SARS-CoV-2の累積感染率や集団免疫に関する大規模な抗体調査データにより、5類移行後の感染拡大の様子を客観的に示すことができ、COVID-19予防対策上の基礎的な疫学データになります。
- 抗体価と感染リスクとの関連が明らかになれば、抗体を測定することの予防医学上の意義や、ワクチン接種の対象や時期を決める上で参考となるデータが得られます。
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症の実態とその規定要因を明らかにすることで、後遺症に対する予防やケアのニーズを示すことができます。
- ウイズコロナ期におけるプレゼンティーズムとアブセンティーズムの実態と規定要因を明らかにすることで、医療従事者の働き方改革の推進に資することができます。
主任研究者
溝上哲也(国立国際医療研究センター 臨床研究センター疫学・予防研究部長)
新型コロナウイルス感染症は世界中の人々の健康と生活に甚大な影響を及ぼしました。5類感染症となった現在もその脅威がなくなったわけではありません。6つのナショナルセンター職員を対象とした本調査により、感染状況・健康状態・仕事パフォーマンスなどの推移を調べ、その関連要因を明らかにすることにより、医療関係者がウイズコロナ期において感染症に対峙しつつ、健康的な働き方を実現する一助となれば幸いです。
分担研究者
国立国際医療研究センター
- 臨床研究センター 疫学・予防研究部
山本尚平
国立がん研究センター
- がん対策研究所 予防研究部
井上真奈美、平林万葉 - がん対策研究所 コホート研究部
金原里恵子
国立成育医療研究センター
- 女性総合診療センター 女性内科診療部
山口晃史
国立精神・神経医療研究センター
- 病院 臨床研究・教育研修部門 情報管理・解析部
竹田和良
国立長寿医療研究センター
- バイオセーフティ管理室
錦見昭彦
国立循環器病研究センター
- 研究所 予防医学・疫学情報部
西村邦宏、尾形宗士郎 - 研究所 医学統計研究部
寺本佳楠子