ナショナルセンターによる医療情報発信の基盤整備事業
研究概要
ナショナルセンター(NC)のミッションとして、「国内外のセンターが担う疾患に関する知見を収集、整理及び評価し、科学的根拠に基づく予防、診断及び治療法等について、正しい情報が国民に利用されるようにホームページを活用するなどして、国民向け及び医療機関向けの情報提供の充実を図る(第3期中長期目標・中長期計画)」ことがあり、これに基づき、NCの各情報発信部門は医療情報発信の取り組みを継続して行なってきました。
6つのNC(6NC)の取り組みの具体例としては、国立がん研究センターのがん情報サービス、国立循環器病センターの循環器病対策情報センター、国立精神・神経医療研究センターのストレス・災害時とこころの情報支援センター、国立成育医療研究センターの妊娠と薬センター、国立長寿医療研究センターの認知症・高齢者に関する情報発信、国立国際医療研究センターのエイズ治療・研究開発センター・AMR臨床リファレンスセンター・糖尿病情報センター等があります。
SNSの普及に伴い、インフォデミックとも呼ばれる情報の氾濫が社会問題となり、市民と行政・専門家間での有効なコミュニケーションの必要性が高まっています。欧米では、医療情報の信頼性・分かりやすさ・市民参画を促進する疾病横断的な取り組みが米国CDCや英国NHSなどの公的機関により主導されているものの、本邦においてそのような機能を担う公的機関はありません。パンデミックを経て日本版CDC構想が具体化される中で、国民に正しい医学情報を早く届け、適切な情報利用を促すための基盤を整備・強化することは急務です、本研究は医療情報の質や発信の方法について、各疾患の専門領域の枠を超えて現状の把握・分析を行い、質の高い医療情報発信を行うための疾患横断的な取り組みを行います。
研究のイメージ図
期待される効果
- 6NCから発信される医療情報の現状把握
6NCの医療情報発信に関する取り組みの現状を把握し課題を明らかにすることで、効果的な人材や財源の配分に寄与することができる。 - 医療情報の信頼性と利用しやすさに関する評価ツールの開発
情報の信頼性と利便性を保つための基準をまとめ、チェックリストを開発し、6NCから医療情報発信される情報の質の維持・向上に貢献する。 - 公的機関による医療情報発信に関する政策提言
日本の公的な医療情報発信のあり方について論点を整理し、政府や自治体による平時のヘルスコミュニケーションのみならず、有事のリスクコミュニケーションにも貢献する。 - ヘルスコミュニケーションに関する人材育成と国際連携基盤の構築
6NC内外でヘルスコミュニケーションに関する人材育成を積極的に行うほか国際連携の場をつくり、6NCの医療情報発信の基盤強化と持続可能性の向上に貢献する。
主任研究者
井花庸子(国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 医師)
これまで、NCの各情報発信部門では、疾患の専門家が工夫を重ねながらインターネットを通じて情報を発信してきました。しかし、公的な医療情報発信機関として、共通のビジョンや情報の質を担保する管理基準は存在していませんでした。今回、疾患を横断する医療情報発信の基盤を構築することで、市民にとってより分かりやすく、信頼性の高い医療情報の提供を促進し、日本の公衆衛生の向上に貢献したいと考えています。
分担研究者
国立がん研究センター
- がん対策研究所 がん情報提供部
石川文子、齋藤弓子、堀拔文香、八巻知香子
国立循環器病研究センター
- 予防医学・疫学情報部
西村邦宏、中塚清将
国立精神・神経医療研究センター
- 行動医学研究部
大沼麻実
国立国際医療研究センター
- 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター
是永匡紹 - AMR臨床リファレンスセンター
藤友 結実子 - 糖尿病情報センター
大杉満
国立成育医療研究センター
- 女性の健康総合センター 妊娠と薬センター
後藤美賀子、藤岡泉
国立長寿医療研究センター
- 先端医療開発推進センター
鈴木啓介