免疫介在性疾患の血中プロテオーム解析を通じた新たなエンドタイプ解析と発症メカニズムの探索
研究概要
近年、医薬開発技術の革新的な進歩により、病態に関与するとされる特定の分子を対象とした分子標的薬等の新薬が、多くの分野で上市され実用化に至っています。一方で、特定の分子を標的とするような薬剤の効果は、同じ疾患とされる患者においても、薬剤が奏功する患者群と、薬剤の効果が乏しい、あるいは無効な症例が多く存在することも明らかになりつつあります。これらの事実は、同じ一つの疾患と考えられていた疾患でも、疾患の根底に存在する病態メカニズムは患者個々で異なる可能性を示唆しています。
そのため、患者個々において、薬剤の効果の有無を事前に判定できるようなバイオマーカーの開発が求められています。本研究では、免疫が関与して発症する疾患を対象として、血液中の蛋白を網羅的に解析することにより、薬剤の効果等を判定できるバイオマーカーの探索を行うことを目的としています。また、異なる疾患と考えられていた疾患の中にも、共通の病態が存在する可能性も示唆されています。本研究では、各ナショナルセンターで解析対象としている異なる疾患間での比較も行い、共通の病態の有無を探索します。異なる疾患において共通の病態の存在が明らかになれば、一つの疾患の治療薬を別の治療薬として使用できる可能性があります。異なる専門性を持つ6つのナショナルセンターの連携力と特性を活かして、新たな診断法・治療法の開発に寄与できればと期待しております。
研究のイメージ図
期待される効果
本研究により、治療効果予測に活用できるバイオマーカーの一端が明らかとなれば、将来的に患者個々に最適な治療を提供できるようになる可能性があります。また、一つの疾患で既に治療薬として使われている薬剤が、別の疾患にも応用できるようになる可能性があります。
主任研究者
森田英明(国立成育医療研究センター、免疫アレルギー・感染研究部、アレルギー研究室長)
医療技術の進歩により、様々な治療薬が使えるようになりましたが、患者個々においては最適な治療法に辿り着くまで時間がかかるケースが多いと思います。本研究により、患者個々にとっての最適な治療法の選択に、少しでも貢献できればと考えております。また、特定の疾患を対象として既に治療薬として臨床で使用されている薬剤を、他疾患に応用できることがわかれば、速やかな臨床応用につながる可能性があると期待しております。
分担研究者
国立循環器病研究センター
血管生理学部 中岡良和
国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 知的・発達障害研究部 岡田俊
国立国際医療研究センター
糖尿病研究センター 糖尿病情報センター臨床情報研究室 坊内良太郎
国立長寿医療研究センター
精神科 安野史彦
国立がん研究センター
研究所 病態情報学ユニット 山本雄介