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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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食物蛋白誘発腸炎の腸管オルガノイドバイオモデル開発

本研究は、新生児期に発症する腸炎で国の指定難病にも登録されている新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎(food-protein-induced enterocolitis syndrome; FPIES)の治療法開発を目指しています。
FPIESは、摂取した米や大豆などの特定の食物によって消化管に炎症を引き起こす疾患で、日本においては1990年代後半から症例報告数が急増してきました。診断・治療法はまだ確立しておらず、10%近くの症例は重症型であり壊死性腸炎、大量下血、消化管閉鎖や消化管破裂など生命予後にも影響を与える状況を引き起こします(Nomura I, et al. J Allergy Clin Immunol 2011)。FPIESの約半数の患者は、出生後7日以内に発症し、超早期発症もこの疾患の診断と治療を大変難しいものにしています(Suzuki H, et al. Allergol Int 2020)。本疾患の腸管では、栄養環境とともに細胞性免疫の乱れが関与しているとも考えられます。
そこで、FPIESの病態を明らかにし診断・治療法の開発を促進するため、本研究ではヒト多能性幹細胞からオルガノイドを作製する技術を応用し、原因と考えられているマクロファージを内在化する腸管免疫応答バイオモデルの構築と炎症応答分子モデルの探索を行います。本研究の主任研究員である内田ら国立成育医療研究センターは、ヒトiPS/ES細胞から試験管内で蠕動運動、吸収や分泌能などのヒト腸管機能を有する腸管オルガノイド"ミニ腸"の創出に世界で初めて成功しています(Uchida H, et al. JCI Insight, 2017)。このミニ腸は、様々な小腸の粘膜細胞を備えるだけでなく、粘膜下領域に腸管神経叢、平滑筋細胞の存在も確認され、ヒト腸管組織構造に類似した組織構造を示す極めてハイスペックな試験管内ヒト腸管モデルです。分子プログラム解析では、分担研究者の添田らがマウスモデルで明らかにしてきたマクロファージ関連IL-10分子シグナルに着目し分子機序の探索を進めていきます。研究協力者である野村は、厚生労働省のFPIES政策研究事業代表であり臨床病態の最新知見を得て本研究開発を進めていきます。
FPIESは新生児期の発症で、重篤である場合一生の問題となります。その病態の理解と診断治療開発を、ナショナルセンターの連携により進め、社会に還元していきます。

研究イメージ

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期待される効果

  • 新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)の診断・治療開発の進展に資する科学的エビデンスを生み出します。
  • 臨床で得られる病態の解明に関するヒントを、このバイオモデルで検証できるようになります。
  • 診断治療指針の策定への貢献も期待されます。

主任研究者

内田孟(国立成育医療研究センター 臓器移植センター)uchida.png

小児期での消化管の病気は、栄養や免疫など全身状態と発育に大きく影響します。診断を確実に行い、有効な治療法の開発に繋げていくためにも、病気の理解は必須です。私たちは子どもたちの健やかな成長のため、試験管の中での新しい研究を基に、実際の臨床へ貢献することを目指していきます。

分担研究者

【国立国際医療研究センター】
・糖尿病研究センター分子糖尿病医学研究部
 添田光太郎