放射線治療における画像照合による被ばく線量の管理および評価に関する研究
これまで、放射線治療で用いる高エネルギーの放射線による患者さんの被ばく線量については、医療法および各種ガイドラインに則った品質管理・品質保証により、出力の管理が行われています。一方、放射線治療では、治療を行う前に、まず治療部位の位置を正確に合わせる目的で、X線撮影やCT撮影などの低いエネルギーの放射線を使用した放射線画像を取得しますが、この治療前の画像撮影による被ばく線量は厳密に管理を求められていませんでした。
このような状況の中、国内で医療法施行規則が改正(2020年4月施行)され、検査等における患者さんの被ばく線量の適切な管理が求められるようになりました。国立国際医療研究センター病院放射線治療科では、管理表を作成し、撮影の方法とそれによる被ばく線量をその都度記録していますが、施設によってその方法と実施状況は様々です。また、現在の放射線治療は、高精度化、精密化が進み、治療部位を正確に照合することの重要性が高く、以前に比べ照合用の撮影の頻度が増加しています。
本研究では、放射線治療で用いる高いエネルギーの放射線量に加えて、治療前の治療部位照合用の撮影による被ばく線量を体系的かつ自動的に計測し管理・記録できるシステムを開発し、日本に普及させることを目指します。また本システムは、放射線治療の全期間を通した被ばく線量の安全性も確認することを可能とします。
研究のイメージ
期待される効果
- 放射線治療において、治療部位の位置を照合するために必要な放射線画像の取得時の被ばく線量を記録するシステムを開発し、安全管理の基盤を構築します。
- 本システムにより、放射線治療全期間を通じて被ばく線量を統合的に管理および評価することができ、放射線による被ばく線量の管理と患者さんの安全性の確保に貢献できます。
主任研究者
菅原康晴(国立国際医療研究センター病院 放射線診療部門 治療精度管理主任)
本研究は、放射線治療において、治療部位の位置を正確に合わせるために使用する放射線画像を取得する際の被ばく線量を管理する体制を構築し、治療全期間における放射線画像の撮影に由来する被ばく線量を統合的に評価するものです。さらなる安全管理体制の構築と、その意義に対する探索を行い、そこから得た知見をより安全な医療の実現ために、臨床の現場に導入することを目指したいと思います。
分担研究者
【国立国際医療研究センター】
・病院 放射線診療部門
菅原康晴、小田部和輝、岩崎翼、大塚駿
【国立がん研究センター】
・中央病院 放射線品質管理室
岡本裕之