日本人妊婦における血液凝固制御系の動態とプロテインSK196E多型の関連に関する研究
近年、静脈血栓塞栓症が産科危機的出血に次ぐ妊産婦死亡原因として問題となっています。妊娠中は子宮による静脈の圧迫や安静などから血栓症が生じやすく、多胎妊娠ではリスクがさらに高まります。また、妊娠中はエストロゲン上昇に伴い凝固制御系が抑制されて凝固系が亢進し、血栓形成が促進されることが知られています。しかし、日本人妊婦におけるプロテインS、プロテインC、アンチトロンビンなどの凝固制御因子の動態に関しては不明な点が多いのが現状です。また、血栓症の強いリスク因子には先天性血栓性素因(第Ⅴ因子R506Q多型、プロテインS欠損症、プロテインC欠損症、アンチトロンビン欠損症など)があります。なかでもプロテインSK196E多型は日本人に特有で約55人に1人の頻度であると報告されています。本研究では、日本人妊婦において凝固制御因子の抗原量・活性の妊娠経過に伴う変化を明らかにするとともに、日本人に特有の血栓性素因であるプロテインSK196E多型の妊娠中の凝固制御系に及ぼす影響について研究します。
国立成育医療研究センターには多数の分娩管理実績があり、国立循環器病研究センターは豊富な基礎研究の実績があります。この2施設が協力することにより実現可能な研究となります。
研究のイメージ図
期待される効果
- 日本人妊婦における凝固制御因子の抗原量・活性の標準値が示されること
- 標準値をもとに周産期医療における血栓症ハイリスク患者の抽出が可能になること
主任研究者
室本仁(国立成育医療研究センター 胎児診療科)
国立成育医療研究センターでは年間2000件以上の分娩を管理しています。また、国立循環器病研究センターは豊富な基礎研究の実績があります。両センターの強みを生かした共同研究で、より適切なリスク評価方法の開発、ハイリスク患者の抽出を可能にする基礎研究となることを目指し、妊産婦死亡を減らすことに少しでも貢献できるデータの蓄積に尽力したいと思います。
分担研究者
【国立循環器病研究センター】
・分子病態部
丸山慶子
【国立成育医療研究センター】
・胎児診療科
小澤克典