臨床看護師を対象としたEvidence-based practiceと情報リテラシーに関する研究:EBPのベースライン調査およびICTを活用したリカレント教育の評価
本研究は、看護師の「根拠に基づく実践」(Evidence-based Practice, 以下「EBP」とします)の能力を高めるために必要な情報リテラシー(情報を自己の目的に適合するように使用できる能力)の習得を目的とした学習コンテンツを提供し、その評価を行うものです。
EBPの重要性は広く知られていますが、その一方で、看護師は、根拠となる情報を検索したり、研究論文を読むために必要な知識スキルに対する自己評価が低い傾向にあることが、国内外の調査でわかってきています。
日本の看護師は、病院で働きながら看護研究を行う慣習があるため、そこで研究の知識を学ぶ機会があります。しかし、EBPに必要な情報リテラシーの向上を目指すうえでは、教育体制はまだ整っていません。また、日本の看護師がどれくらいEBPに取り組んでいるのか、情報リテラシーはどの程度習得できているのかは、よくわかっていません。
そこで本研究では、国立高度専門医療研究センターの看護師を対象に、①EBPと情報リテラシーに関する調査、②EBPと情報リテラシーを学ぶe-Learningを用いた介入研究の2つを計画しています。また、e-Learningの評価は、介入前後で、EBPに対する理解度や情報リテラシーなどがどのように変化するかを明らかにします。
EBPや情報リテラシーの向上に必要な知識スキルは、その時々で、自分に必要な学習が異なります。そのため、必要な学習を自ら取捨選択できる基盤が必要です。本研究は、看護師の「学びの場」を作ることに貢献したいと考えています。これは、持続可能な開発目標(SDGs)「質の高い教育をみんなに」にも該当します。将来的には、インターネット上で誰でも無料で受講できるコース(Massive Open Online Courses, MOOCs)として公開することを目指しています。
研究のイメージ
期待される効果
- 実践の根拠となる研究論文を効率的に検索できるようになる
- 「効果がある」といった言葉を鵜呑みにするのではなく、「実際の臨床で、どの程度の効果が期待できるのか」といった観点で、研究論文を吟味できるようになる
- 実践の根拠として、研究論文の知見をケアに活かすことで、よりよいケアにつなげることができる
主任研究者
友滝愛(国立国際医療研究センター 国立看護大学校 看護学部 人間科学 情報学 助教)
医療現場で日々遭遇する課題に対して、これまでの経験や知識だけでは解決が難しい場合 -そのようなとき、私たちは自分が未経験のことであっても、研究の知見から最善のケアにつなげる選択肢を得ることができます。この過程を示すのが、まさにEBPです。
本研究で提供するe-Learningが、「研究をするための研究知識」ではなく、「実践に活かすための研究知識」の思考を身に付ける機会となり、研究論文がよりよい臨床実践に役立つよう、学習プラットフォームを提供する立場から医療の質向上に貢献できればと思っています。
分担研究者
【国立国際医療研究センター】
・臨床研究センター データサイエンス部 生物統計研究室
上村夕香理