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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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医療機関における転倒転落リスク低減の調査:施設間比較と疾患特性別の因子検討

研究概要

日本の高齢者割合は増加の一途を辿っており、2020年の調査では高齢化率が28.8%となっています。病院内での転倒転落の多くは年齢とともに増加傾向にあり、長期的な入院や合併症の併発、生活機能の低下を生じてしまいます。また、転倒転落の経験によって転倒転落への恐怖心が生じ、活動範囲の狭小化や心身機能の低下を招く悪循環へと陥るおそれがあります。これらにより、入院中の転倒転落はQOLの低下だけでなく、心身の負担や医療コストを増大させ、さらには病院側に賠償命令が下された事例も存在するなど、社会的な課題となっています。

本研究の目的は、高齢者の転倒転落予防に関する効果的な対策を立案することであり、3つの医療施設での転倒転落に関するインシデントレポートを調査します。患者の年齢や疾患といった内的因子と、施設構造やベッドサイド環境などの外的因子を分析し、施設ごとの違い、もしくは共通点を比較検討します。また、各施設の転倒予防の取り組みや多発する条件・環境についても調査を行います。

今回のような多施設共同研究では、幅広いデータを短期間で収集し、様々な視点から転倒予防策を検討することができるため、高齢者の安全な入院生活や医療の質向上につながると期待されます。また、得られた知見を医療スタッフの教育にも活用し、患者ケアの向上を目指します。効果的な転倒予防策の立案することで、広く社会に還元、貢献することを目指しています。

研究のイメージ図

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期待される効果

転倒転落予防策の見直し、ブラッシュアップが行われることで、転倒や転落の件数が減ることをはじめ、調査を進めていく中で、転倒や転落が起こりやすい場所や時間、患者さんの病気や年齢といった特徴が見えてくると思われます。

さらに、各病院の患者層などの特徴を踏まえ、結果を分析することで、より具体的な予防策を提案することができます。転倒や転落の事故が減ることで、入院患者さんはより安心して入院生活を送ることができます。このような好循環での入院生活は、心身負担の軽減により、入院期間が短くなったり、転倒や転落によって生じる治療費用を防いだりすることもできます。

この研究のように、複数の病院が協力して転倒や転落について調べる研究は、日本ではまだあまり行われていません。そのため、この研究の結果を論文などで発表すると、他の病院が同じような研究を行う際の参考になると考えられます。また、今後さらに研究を進めて、新しく考えた予防策の効果を確かめる必要がある場合、この研究の結果をその準備として活用することもできます。患者さんの安全を守るだけでなく、医療の質の向上や効率化にも貢献することができると考えています。

主任研究者

牧 賢一郎(国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部 作業療法主任)

転倒による入院中の骨折は絶対に防ぎたい課題です。転倒のメカニズムはまだ十分に解明されておらず、安全・安心な医療提供のためにも、この研究は重要であると考えています。人手を増やして転倒を防ぐだけでなく、働き方や環境の工夫などを通じて転倒を防ぐ方法を探ります。様々な医療施設でも利用可能な予防策の立案とともに、若手の医療従事者にとっても参考となる転倒予防の知識を発信したいと思います。

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分担研究者

【国立循環器病研究センター】
看護部長室
兵頭昇

【国立がん研究センター】
リハビリテーション室
横田翔太

研究協力者

【国立長寿医療研究センター】
リハビリテーション科部
川村皓生

【国立長寿医療研究センター】
先端医療開発推進センター 臨床研究支援部
木ノ下智康