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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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緩和的放射線治療の期間短縮が患者のQOLに及ぼす影響に関する研究

研究概要

がんが骨に転移して痛みがある場合、放射線治療は痛みを和らげるのに効果的です。この治療は、従来は2週間ほどかけて行う治療でした。しかし近年では、治療を1週間で終わらせたり、1日で終わらせたりする方法が普及してきています。どれほど時間をかけて治療を行うかは、骨の病変の広がりや、患者さんの状態など様々な要素により決定されています。

最近では欧州のガイドラインで、がんの骨への転移に対して痛みを和らげるための目的であれば、1日で終わる放射線治療が薦められるようになりました。これは複数の臨床試験で、放射線治療の期間を短くしても、痛みを和らげる効果が落ちなかったことが確認されたためです。治療の期間を短くすることで通院回数が減るなど、患者さんの負担が軽くなるという効果が期待されています。しかし、これまでの研究では客観的な数値やデータに基づいた評価方法を使っており、患者さんが治療を受けて実際にどのように感じたか、その体験を研究者が正しく理解することは難しいです。そのため、治療期間が短くなることで患者さんが良い治療だったと感じているのかを評価するための研究が求められています。

患者さんの体験や気持ちを詳しく理解するためには、「質的アプローチ」と呼ばれる方法が有効です。これはインタビューなどを通じて患者さんの声を直接聞き、その内容を深く分析する方法です。

今回、質的研究の専門家が多く在籍する国立看護大学校と協力し、放射線治療にかける日数を減らすことで、患者さんの体験がどう変わるのかを評価する研究を計画しました。

研究のイメージ図

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期待される効果

質的アプローチを用いることで、骨に転移したがんによる痛みを和らげるための放射線治療を受けた患者さんが、実際に治療を受けてどのように感じたのか、生活にどう影響したのかを詳しく評価することが可能になります。本研究において、治療期間を短くすることで患者さんがメリットを感じていることが示されれば、より短い期間の放射線治療が広まる可能性があります。これにより、将来治療を受ける患者さんの負担が小さくなることが期待されます。

主任研究者

富澤建斗(国立がん研究センター東病院 放射線治療科 医師)

患者さんの痛みを和らげることは、がんを治すことと並んで放射線治療の重要な役割です。今までのように、放射線治療によって患者さんの痛みがどれほど良くなったかを数字で評価することも、もちろん大事だと考えています。
しかし、この治療では患者さんの苦痛を和らげることが目的ですので、単なる数字の評価のみではなく、患者さんが治療を受けてどう感じたのか、治療を受けて良かったと思ってもらえたのかをしっかり評価することが重要だと考えています。そんな思いから、この研究を計画しました。

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分担研究者

【国立看護大学校】
基礎看護学
田村里佳